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戦略と戦術―羽生、宇野、ネイサンを中心に ~銀●伝ってマジで役に立つね~

 

 今回はタイトル通りまじめです。どうも、ささきです。今日は銀英伝の重要性を世界に告知しに来たのだ。みんな、読むんだぞ。アニメでもいい。ささき実は見てないんだけど……でもいいらしいからそのうち見てみようかな。

 

さて。今日は「戦術と戦略」を軸にブログを書くことにする。

 

 平昌五輪の羽生結弦はまさに、ラインハルト・フォン・ローエングラムだった。ジャンプの本数、構成、そしてなにより右足首の状況。「五輪」という舞台に即した戦術はあまりにも緻密で、大胆であった。ま、このあたりは羽生本人もさることながらチーム・クリケットの力が大いに生きたというのもあるだろう。やべえよなクリケット。すげえよクリケット

 上でわたしは「戦術」という言葉を用いたけれども、銀河英雄伝説を読了済みの方々には了承していただけることでしょう。まだ読んでいない方にざっくり説明すると、戦術は「戦場での作戦・行動」で、戦略は「戦に至るまでの準備」である。だいたいね。詳しくは本編を読んでくれ。面白いから。

 そんなこんなで用語については了解を得たということにして。

 オリンピックシーズン前に「戦略の羽生 戦術のネイサン」という記事をどっかで読んだ。いい記事でしたね、あれ。厨二心をくすぐられたわ。でもちょっと反論したいことがあるんだよなあ、ささきには。

 ひとつのプログラムをワンシーズン(もしくはそれ以上)かけて徐々に磨き上げていく羽生。

 ジャンプの構成を自在に操り、そのときの状況に応じて攻勢を組み替え、勝ちに近づくネイサン。

 たしかにこうして書いてみると違いは明確なのだが、それを「戦略」と「戦術」といえるのかどうか。

 上の定義に従うと、これどっちも「戦術」レベルの話じゃない?

 戦略に基づく戦術、というのが兵法の基本であって(適当に書いてるから嘘ぶっこいてる可能性もあるよ、このあたり)、ふたりの戦い方の違いは戦略の違いからくるものであるんじゃないのかなあ。

 平昌五輪、ショートプログラム一位は羽生結弦。フリープログラム一位はネイサン・チェン。金メダルは羽生結弦、銀メダルは宇野昌磨、銅メダルはハビエル・フェルナンデス

 こから導かれる成功戦略は、まあだいたいふたつに絞られるだろう。

 

  1. 完成度を軸にし、得意の構成で基礎点を稼ぐ。PCSとGOEで基礎点差を埋める。
  2. ジャンプ構成を軸にし、クワドジャンプを多数導入する。PCSの差は基礎点で埋める。

 

 平昌五輪は、どちらかというなら①戦略が優勢であっただろう。結果的にね。でも②が悪いというわけではまったくなく、実際フリー一位はネイサンなわけだし、宇野も②の要素を持つ選手だ。ただし②は結構リスキーというか、ハイリスクハイリターンな面があることは、2018世界選手権を見ていても自明である。例を挙げるとするなら、ヴィンス(ヴィンセント・ジョウ)はまさに五輪とワールドそれぞれでリターンとリスクを経験した選手だ。あとあれね、怪我。みんな本当気を付けて……。

 とはいってもみんなすごいというか、すべての要素のクオリティの高さは前提としてってことなんだけどね。みんな全部うまいからね。ステップもスピンも、スケーティングも。みんな上手だよほんと。後ろ向きに滑れるのほんとすごいな……。(つい最近はじめてスケートをしたささきである)

 しかしライバルは手ごわい。

 五輪の金メダル候補たちはその上でさらに「プラス」を求めねばならなかった。そしてそれは今後も同様である。

 五輪の宴は終わった。ここからまた新たなる四年間がはじまる。そしてここのポイントこそ、選手たちの「戦略」をパンピーが垣間見ることのできるわずかな時間である。ささきはうきうきわくわく趨勢を見守ってきた。わーいインタビューわーい。

 宇野昌磨は「完成度」に舵を切るようだ。ふむふむ、ささき的にはとてもうれしい。彼の表現力、物理的なPCSの高さを思うと、その戦略は向いているかもという気持ちになるのだ。4Aについても取り組まない姿勢をはっきりと示しているので、以前のインタビュー通りクワドの種類を絞ってGOEを高めていく方針なのだろうなあと思っている。彼の場合、着氷を堪えることが多いので、そのあたりで改善を図っていのかもしれぬ。2017-2018シーズン後半はジャンプ大暴れ(宇野比)なところもあったから、今はそのあたりに取り組んでいるのかしら。まあいずれにせよ新プロが楽しみだなあ。そしてエキシはどれを使うのだ昌磨氏。

 ネイサン・チェンはどうやら「ジャンプ構成」を重視して進んでいくようである。ジャンプに対する意欲は尽きず、4Aについてもコーチからちらほらと情報が漏れてくる。いやそのまえにトリプルアクセルでは、それだったらいっそ五回転のほうが現実的ではないか、という気もしなくはないが。彼の場合問題になってくるのはルール改正かもしれない。GOE幅の変更と、フリーの時間短縮。ささきはネイサンの演技を一度だけ見たことがあるのだが、ジャンプの構えだけを取り上げると、やはり多少長い。まっちーの解説通り、まさに「ロシア式」。コーチがロシアのひとなのだ。となるとやはり、PCSがオリンピックメダリスト陣と比べると伸びない。ま、それでもクワドの基礎点はものすごいものがあるし、そのあたりをぶちかましてくれるほどの力を期待してしまう。なんせ、彼は現ワールドチャンピオンだからね。基礎点で殴られてえ。

 

 てな感じで、同年代トップグループにおいても戦略の違いが見え始めた昨今である。もちろん、フィギュアスケートの戦略はこればかりではない。今回はトップグループのみに着目したが、ジュニア選手にだって、クワドを飛ばないベテラン選手たちにだって彼らの戦略がある。とくに後者の戦略には、競技のみに限らない、人生における考えが垣間見える。

 つまるところ戦略とは、フィギュアスケートといかにかかわっていくか」ということであり、ベテラン選手たちにとっては「人生をどのように生きていくか」につながるものでもあるのだ。きっと。

 カロリーナ・コストナーが現役続行を決めた。31歳の彼女があれほどうつくしく、強く、氷の上を舞う。それは女子選手たちにとってどれほどの希望になることだろう。氷を降りても人生は続く、とカロリーナはインタビューで述べていた。そして彼女はいまだ、氷の上にいる。すばらしいことだ。

 選手の数だけ戦略があり、選手の数だけ人生がある。

 やっぱりフィギュアスケートっておもしろいし、楽しいし、すてきだ。

 

 さて、話を競技に戻そう。今回は男子シングルの話で終ろうと思う。

 真・四回転時代。そのはじまりは、と問われるとやはりわたしはひとりの選手の名前を思いつく。

 カナダのパトリック・チャンだ。

 あれだけのスケーティング能力を持ち、クワドジャンプを飛ぶ彼。パトリック・チャンに勝つためには、というのが時代の起点であるとわたしは思う。

 そして、現世界記録保持者の戦略は、この問いに対する回答は、こうだった。

パトリック・チャンより多くの本数クワドを飛び、基礎点を得る。そして同じくらいにPCSを上げればいい」。

 すべてはこれにも基づく結果。GOEという戦術を武器に、羽生結弦はクワドトウループとクワドサルコウのみで110、220、330という数字をたたき出した。そしてこれは今回の平昌五輪にも深く寄与することになる。

 「完璧ならば」勝つ、という言説には常に、「完璧はありえない」という前提が存在する。しかし彼の「完璧」はすでに実現され、目に見える形で残されている。わたしたちは、羽生結弦がTとSで戦えることを知っていた。かくして彼は最後まで優勝候補であり続けたのである。

 いざ五輪が終わってみると、すべてが糸で結びあわされたように見えてくるが、結局これはわたしがすべてを「物語」に収束させてしまっているだけなのかもしれないなあ。反省しつつやめられないのがオタクのさがだ。

 宇野昌磨浅田真央の出会い。羽生結弦エフゲニー・プルシェンコの出会い。勝者の歴史は物語になりやすい。自己反省を繰り返しつつこれからも元気に見守っていかねばなるまい。

 四年間は一区切り。また、フィギュアスケートという競技は次のタームへと突入することだろう。パトリック・チャンは引退し、ハビエル・フェルナンデスも舞台を去ろうとしている。時代は移り変わるが、選手たちの挑戦はもちろんおわらない。

 傍観者たるわたしはときおり過去を振り返り、さまざまなストーリーをつなぎながら、これからも彼らを応援し続けるのみである。

 いつか彼らの伝説が歴史になる、その時まで。

 

 これからの四年、楽しみだなー!あとみんな、銀英伝読もうね。

 はーい今日はここまで! 長いのに読んでくれてありがとう。

 

 

P.S.

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